音楽学科で教鞭をとる一方、管弦楽やオペラ、吹奏楽など多彩な楽曲を作曲し、国内外で活躍する田中久美子先生が、去る11月23日、指揮者として本格デビュー。香川県丸亀市の綾歌総合文化会館アイレックス・大ホールにて開催された「丸亀市民吹奏楽団 第47回定期演奏会」にゲスト出演し、自作曲「讃岐ラプソディー」を披露しました。
丸亀市民吹奏楽団では、今回「まるがめ文化芸術祭」主催公演として演奏会を開催するにあたり、特別ゲストとして田中先生に出演をオファー。作曲者自ら指揮を行うスペシャルな演奏会が実現する運びとなりました。「過去に自衛隊音楽隊などで指揮を行ったことはありますが、指揮者として本格的に招聘されたのは初めて。市主催の公式な演奏会で、楽団の方々の熱意も大いに感じ、私自身も気合を入れてのぞみました」と田中先生は語ります。
事前練習の際には、作曲者としての目線からも熱心に指導。「楽器の演奏技術はわかりませんが、自分で作った曲なので楽曲解説はお手のもの。曲の組み立てに始まり、このパートはこれがメインの楽器、この楽器はこんな役割をしているとか、どんな音やどんな表現が欲しいかを1フレーズごとに説明したんです。すると驚くほど演奏が変わっていきました」(田中先生)。コミュニケーションを重ねて指揮者と演奏者の心が通じ合い、作品が順調に仕上げられていきました。
演奏会当日、田中先生は燕尾服姿で颯爽と登場。トークタイムでは、この曲が生まれたエピソードも紹介されました。もとは瀬戸フィルハーモニー交響楽団から依頼を受けて書いた管弦楽作品を、田中先生自身が吹奏楽に編曲。吹奏楽が盛んなフランスで吹奏楽コンクールの課題曲に選ばれたのを機に、現地で人気を集め、日本でも知られるようになったといいます。
そしていよいよ本番。讃岐のおおらかな自然を感じさせるメロディーや、民謡をモチーフに取り入れたエキゾチックな調べがホールに響き、約300人の聴衆が酔いしれました。
「とても楽しんで指揮することができて満足です。楽団員の皆さんも来場されたお客様も喜んでくださったようでした」と田中先生は振り返ります。
演奏会の企画委員長を務めた丸亀市民吹奏楽団の大西絵美さんにお話を伺いました。
「この『讃岐ラプソディー』という作品に惚れ込み、演奏したいという願いを、田中先生ご自身に指揮していただくという願ってもない形で実現することができました。
コロナ禍のため2年ぶりとなった定期演奏会は、私たちにとってこのホールでの初の単独公演で、田中先生をお招きするのも初めてのこと。楽団員も最初は緊張していましたが、田中先生の優しくあたたかいご指導のもと、和やかな雰囲気で練習できて楽しかったです。音楽の構成や作曲家の意図をふまえて演奏するというのはこういうことかと、大きな刺激を受け、勉強になりました。
当日はたくさんのお客様にお越しいただき、反応もとても良かったです。特に『讃岐ラプソディー』は大好評で、皆様に楽しんでいただける演奏会になりました。
私たち丸亀市民吹奏楽団には、世代も職業も幅広いメンバーがいますが、仕事や育児、介護など様々な事情を抱えながら練習や活動を続けるのは大変。好きなことに集中できる時間は本当に貴重だと感じます。それは通信教育部で学ぶ方にも通じるのではないでしょうか。皆さんも何かに打ち込める時間の大切さを意識しながら、頑張っていただきたいと思います」
丸亀市民吹奏楽団 企画委員長 大西絵美さん
2022年2月にフランスで開催される「パリジャン・サクソフォンコンクール」課題曲に作品が選定されるなど、さらに活躍が広がる田中先生。通信教育部でもクラシック音楽の作曲を指導し、自身の作曲プロセスなども紹介しながら、様々な音楽活動に役立つ正しい音の選び方などを伝えています。
「スクーリングでも基礎からわかりやすく指導しますが、少しでも楽典などの音楽知識を持っておくと、余裕をもって学ぶことができ、より理解も深まると思います。ぜひ有意義な学びを得てください」(田中先生)。
田中久美子教授 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
香川県高松市生まれ。京都教育大学音楽科卒業、京都市立芸術大学音楽学部作曲専修卒業。フランスにてミッシェル・メルレ氏(パリ国立高等音楽院教授)、エディット・ルジェ氏(同教授)に師事。京都市、高松市等の委嘱作品、自衛隊音楽隊等からの依頼による吹奏楽作品、フランスの吹奏楽コンクール課題曲など多数の楽曲を発表。多くの作品の楽譜・CDがフランス・オランダ・日本で出版・リリースされている。2017年より大阪芸術大学教授。2018年香川県文化芸術選奨受賞。一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)正会員。